*「ち…地図を広げてキミに会いにいく」のお返事です。先にこちらからどうぞ。

空が一つと知っているから

 園子、元気にしてる?
 手紙ありがとう。ほんとにビックリしちゃったよ。突然なんだもん。沖縄から帰って電話したら、なんだか園子んちスゴイ大騒ぎだったんだよ? って、もうあれから時間も経ったから今更になるんだろうけど。家出だったんだって? おばさまもお姉さんも心配してたわよ。ちゃんと電話とか、とにかく連絡くらいしなきゃ。
 ま、コゴトはそれくらいにして(笑)。
 園子のその勇気に乾杯!だね。スゴイよ、園子。わたしも見習わなくちゃ。っていうか、正直うらやましかった。ちゃんと真さんに会えてよかったね。ほんとよかった。それから、これからはずっと一緒なんだね。
 わたしはね、やっぱり待ってる。待ってるしかないって思えてしまって。臆病なのかな? なんでかな?
 追いかけたくてもどこへ行ったらいいかわからないから──なんて、きっと言い訳よね。うん、言い訳があってホッとしてるのかも。
 もうひとつ、わたしが待っていられる理由に最近気づいたんだけど、やっぱりコナンくんがいるからかな。そばにいつも。あ、勘違いしないでね? コナンくんは小学生なんだし、ホント可愛い弟みたいなもんなのよ。今、園子、この手紙見てツッコミ入れたでしょ? 「新一くんからその小生意気なガキんちょに乗り換える気?」とか言って笑う園子が見えたよ。でも、そんなんじゃないからねっ!!
 うん。でもね。園子がそうツッコミたくなる気持ちもわかるんだ。わたしだって思うもん。コナンくんってどうしていつもわたしのこと守ってくれるんだろうって…。ちょっと自意識過剰になっちゃったりね。ついでに告白しちゃうけど、時々(ほんとに時々なんだよ?)コナンくんの視線にドキッとする時があるの。ただの小学1年生の男の子なのに変だよね。わかってるんだけど、「あ、見られてる」って思って顔を上げると大抵目が合うんだ。コナンくんがわたしの方見てたんだってわかるの。……あ、やっぱり自意識過剰よね?
 そんなことが時々あるから、わたしもなんとなく気になって。…でもわたし、その「気になる理由」がなんなのかもう知ってる。…メガネを取ったコナンくんが小さい頃の新一に似てるのよね。多分それでなんだ。
 コナンくんって、新一の遠い親戚らしいからそりゃ似てても当然かもしれないけど、だけどね…似すぎてるんだ。一番似てると思ったのは、ううん、それはもう似てるなんてレベルじゃなくて同じだと思ったのは、瞳、かなぁ。あとね、仕草。表情。歩き方。走り方。笑い方。話し方。あと、…手のあたたかさとか髪の匂いとか気配とか。………やだ、もう。全部じゃない。
 ごめん、園子。とりとめもなくて。
 書いてるうちに、なんだか色々わかった気がする。園子にもわかっちゃったかな。だけど、もうやめておくね。
 園子がいなくなってとってもさびしくなりました。この前の手紙を読んで、実はわたし泣いちゃったんだよね。いなくなってはじめて気づくんだよね。大事なことに。園子は大切なわたしの親友。代わりなんていないんだ。
 だけど大丈夫。わたしは大丈夫。ホラ、コナンくんもいるしね。
 一年したら帰るんでしょ? 待ってるよ。待ってるからね。
 それでも聞いて欲しくてたまらない話が出来たら、園子とよく立ち寄った提向津川のほとりの公園に行って話しかけるから。あそから見る空が大きくて好きなんだよね。空を見上げて園子を呼ぶから。だから答えてね、園子。
 空が一つと知っているから、だからわたしは大丈夫。
 園子も慣れないそっちの生活でホームシックになんてなってないかな? 真さんがいるから大丈夫って思うけど、それでもさびしくない?
 もしも何かあったら園子もそっちからわたしを呼んでね。遠いけど、この手は届かないけど、それでもね。空を見上げようよ。わたしもそうするから。ホラ、同じ空を見上げてるって、なんかそれだけで勇気わいて来ない? 元気になれる気しない?
 ね。だから約束だよ。
 それじゃ、今日はこの辺で。
 また手紙書くからね。体に気をつけて。
 

おしまい


*「鈴木家大騒ぎでビックリの蘭ちゃん」採用させていただきました。サンキュ華姉っ!!

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