片 想 い
真っ白なウエディングドレスに着替え、式のはじまりを待つばかりの蘭のもとに、少し照れたように園子があらわれた。
蘭のその姿を見た途端、
「らぁぁぁぁぁん!!」
叫んで駆け出した。瞳には涙が溢れて零れて落ちる。
「綺麗だよ〜ぅ、あやつにやるなんてもったいないよ〜ぅ。あーん、この園子様が持って帰る〜っ!」
冗談とも本気ともとれる雄叫びに、蘭はくすくすと笑った。
「もーぉ、何泣いてるのよっ」
蘭は思わず園子の頬に手をかざす。
「バカね…」
そう言いながらも理由もなくもらい泣きしてしまうのが蘭だ。
「やだ、もう! 蘭まで泣かないでよぅ」
「だって、園子が…」
「ごめん! ごめんってばー!」
「何謝ってるの………もう、園子ったら」
「なんだかわからないけど、でも」
そして今度は園子が蘭の頬に手をかざした。
「お化粧はげちゃうよ…、せっかく最高に綺麗なのにさ」
言って笑って。でもまた泣いて。
言葉じゃ伝えきれないことがわかるから───
園子は蘭を引き寄せて、強く抱きしめた。
「おめでとう、蘭」
言ってまた涙は溢れる。
「ありがと…」
蘭もまた、微笑みと一緒に涙、溢れる。
しばらくして時間がやってきた。
呼ぶ声に返事をする蘭の声は緊張で震えていた。
見透かしたように園子が蘭の手をギュッと握った。
たちまち蘭の心は穏やかになり表情に微笑が戻る。
そして、扉のノブに手をかけて──。
本当のところ、園子はその手を離したくなかった。
本気で蘭を引き止めたかった。
でも、わかってる。わかってるから。
また涙が溢れる。
あ、そうか、わたし結構本気で蘭に惚れてたのかもね…。
ちょっと切なくちょっと悲しく。
でもどうにもならない。
未来への扉を開けて、蘭は歩きはじめる。
園子はそんな蘭の後ろ姿を、しばらく追いかけていた。