あ の 日 の つ づ き を



 夏の暑い日だった。久し振りのトロピカル・ランド。
 新一とのデートを楽しんで、わたしは上機嫌だった。新一は「飲み物買ってくる」と言って自販機へ走っていった。
 一人ベンチで新一を待つ。
 今日は、新一も事件や勉強のことも忘れて、子どもみたいに無邪気に遊んでる。わたしは思い出し笑いしながら新一を待っていた。と、そこへ。

 ひゃっ!! 冷たいっ!!

 頬にひんやり冷たい刺激。驚いて飛び退いて、ハッと振り返ると新一が缶コーラを二本手にして悪戯っぽい顔で笑ってる。
「あー!! またぁ!!」
 わたしはまたしてもこの手に引っ掛かった。くやしくて睨みつける。だけど、新一の顔を見ると、あんまり楽しそうに笑うから、一緒になって笑ってしまった。

「冷たくて気持ちいいだろっ?」
 ホラと、またコーラを頬に押し付けにくる。
「あん、もう!!」
 調子に乗ってる新一は、わたしが逃げると面白がる。
 そして。ホラよ、とコーラの缶を一本わたしに渡すと、今度はその空いた手で、
「よく冷えてるぜ?」
 そう言って、頬を撫でた。
 それが妙にくすぐったくて「もう、新一ったらぁ!!」と笑う。
 そのすぐあとに、新一はわたしの頬に頬を寄せて言った。
「どう冷えた?」と。
…って!!
 ちょ、ちょっと新一!!
 こ、こ、こんなとこで一体!!
 わたしの頬は冷えるどころか沸騰寸前。
 全く動じない新一が憎らしくって。
 だけど──。こんな日常がとっても愛しい。こんな日々が戻ってきたことがとっても嬉しかった。
 もう離れ離れは嫌だからね? …そんな思いも込めて、わたしは新一と手をつなぐ。
 さぁ、ここからあの日のトロピカルランドの続きをはじめよう。きっと違う明日が待ってるよね?

Fin