師走
博士に鍵を借りて、勝手知ったる工藤邸の門をくぐる。
人の気配のない大きなお家は、何か出るんじゃないかと
思うくらいにシーンとしていた。
大掃除
「コナンくんは、これお願いね」
わたしが新一の家に大掃除に行くと言うと、
嬉々としてついてきた少年は、
くるくるとよく働いた。
リビング、キッチン、客間…
掃除を進めながら、最後に新一の部屋にたどりついた。
あまり触ってもいけないと、
片付けは出来るだけ目に見える範囲でと思っていた。
だけど、机の引き出しというのは興味津々なもので。
「新一ってちゃんと机の中とか綺麗にかたずけてるのかしらね?」
などと隣にいるコナンくんに聞く。
答えを待つでもなく目の前の引き出しに手を伸ばした。
「あー!!そこは……」
「何?」
言いながらすでに引き出しは開いていて。
コナンくんの頬が真赤に染まるのに気づかないまま、
わたしはそこにあったものを取り出した。
………写真?わたしのだ。
一緒にロスに行った時のものだ。
ちゃんと写真たてに入れられている。
…だけど、わたしはそれを飾っているのを見たことがない。
…なんで?
「ねぇ、なんでだと思う?」
声に出していた。
「なんでわたしの写真なんかがここに?」
小学1年生の彼にそんなこと聞いてもしょうがないのに。
「それは…」
コナンくんは背中を向けた。
「好きだから、じゃない?」
「え?」
「きっと、すごく好きなんだ」
「……」
「多分、地球上の誰よりも………」
振り返ったコナンくんに熱い視線を感じる。
まるで新一に見つめられているような気がして。
胸が高鳴る。
「ありがと………、そうだと嬉しいな」
少年を見つめ、わたしは微笑む。
気づいただろうか、この微笑が誰のものだか。