christmas kiss(新一つぶやきバージョン)
クリスマスイブ。
蘭は、園子がケーキを売るというシティビルの前で、園子を待ち伏せていっしょにイブを祝うんだそうだ。オレとおっちゃんの食事を作ってから、そそくさと出掛けて行った。
取り残されて、おっちゃんは機嫌が悪くなり、外に飲みに出かけてしまった。
9時少し前、1本の電話が入った。
「蘭さん、いますか?」
そう聞く相手は京極真だった。蘭に何か用なのか?
出かけていることを告げると、
「実は、園子さんの自宅に電話したんですが、蘭さんのところへ行ったと聞きまして、蘭さんの行き先ご存知ですか?」
と説明する。子ども相手に丁寧な口調だ。
それで、居場所を伝えた。彼は、その足で園子に会いに行くと見た。
そうなると、蘭は…?
ひとり取り残されるってことにならねーか?
慌ててオレも飛び出して、シティビルへ急いだ。
案の定、蘭が一人取り残されて、それでも園子にエールを送っている姿を目にした。
無理してるよな。
そんな蘭は、「コナン」を見ると、急に泣き出した。
「コナン」でもなぐさめになるなら。いや、オレが却って電話してなぐさめるよりも力になるのかもしれない。この手で抱き締められないなら、新一の姿で会えないなら、蘭にはコナンの方が「やさしさ」を感じるのかもしれないと思った。
待っててくれたお礼にプレゼントを、と言われて、思わずとっておきが頭をかすめる。だけど、これって恋人同士だとか、それに近いカップルなら「とっておき」なんだけど、なんせ「コナン」は小学1年生の子供だからな。…ま、この子どもをいいことに、いただいちゃおうという魂胆でもあるわけで。
「蘭ねーちゃんのチューがいいな」と言ってみる。
当たって砕けてしまうか…。
蘭は、サンタのおねーさんからのチューだと言ってプレゼントしてくれた。
そのとっておきのファーストキスを。
キスはそりゃうれしいんだけど、あとになって、複雑な思いに悩まされた。
蘭のファーストキスの相手は、オレでなく「コナン」だってことが、蘭の胸には刻まれてしまったかもしれないっていう危惧。
相手が「コナン」(オレ自身)であろうと、どうにもやりきれないこの嫉妬心。
そして、その柔らかな感触を思い出しては眠れない夜。
更に、新一として触れることのできないもどかしさを再び。
蘭、オレ、必ず帰るから。帰るとこはそこしかないから。
来年のクリスマス、そのくちびるは、オレのもんだよな?
fin
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