*願いごとひとつだけ*


 ほどよく布団の中があたたまって、コナンは一つ寝返り打った。
 イブの夜。サンタがあらわれる夜。
 まだ眠りにつけなくて、だけど寝てるフリだけ続けて。
 

扉が開く。
 一瞬リビングの灯りが洩れて目にしみた。
 抜き足差し足で近づく影は、包みを一つ手にしていた。
 囁くようにやさしい声で、蘭は、言った。


 「メリークリスマス………

                  ………新一」と。



 ハッとして目覚めた。
 …その瞬間、目が合った。
 蘭との距離は僅か。
 


 ──言葉が見つからない。
 見つからないから。
 ……引き寄せてしまった。その頬に唇を寄せて。

 「サンキュ…」

 蘭の体が震えている。
 それは寒いからじゃないのはわかってた。
 冷えた手を両手で包み込んで、そのまま蘭をあたたまった布団の中へと導いて。
 ただ、凍えそうな心をあたためたかっただけ。


 今日は朝まで一緒に眠ろう……


 ──クリスマスなんて来なくていい。そんな願いを込めながら。