クリスマスツリー
今年も米花駅前に大きなクリスマスツリーが飾られた。
毎年恒例で、この辺ではこのツリーが一番大きい。
そして、何気なく毎年学校帰りにここに立ち寄っていたことを
今、ツリーを目の前にして思い出した。
…だけど、いない。憎まれ口叩く相手が、となりにいない。
今、それに気づいた。
なんかつまんないな・・・
ため息まで出てくる。
ただ。あいつがいないだけなのに。
ちょうどツリーの目の前に位置するベンチに座って、
人並を見ていた。
探してた。
北風が冷たくて、少しだけ泣きたくなった。
もう人並もツリーも見たくない。
視線を遠くに移して。
その時不意に。
目の前に眼鏡の少年が現れた。
彼の視線が揺れてるのはなぜ?
それは迷いなのか、それとも躊躇なのかわからない。
だけど、次の瞬間、揺れがなくなり、
わたしの手をそっと取った。
「行こう」
「…え?」
多分、今度はわたしの視線が揺れていたのだと思う。
「大丈夫」
一言そう言うと、少年は歩き出す。
あたたかい手。強引な手。
それがあいつならいいのにと夢見る。
夢見ると涙が零れるのはなぜだろう…
「いい天気だから、ツリーじゃなくて青空を見よう」
振り返り、少年が微笑む。
「泣かないですむように、さ」
確かに何一つ解決などしていないのに
心癒されるのはなぜなんだろう。
その少年の微笑に、確信が持てたからなんだろうか。
ようやくわたしは微笑を返す。
愛しい少年に、心からの微笑を──。