blue Christmas
今日はクリスマス・イヴ。
わたしは特別クリスチャンってわけでもないけど、やっぱりこの日は特別な日。
昔々、まだサンタクロースを信じていた頃。そしてそれがお父さんだと気づいた頃。次第にご馳走を食べるだけの日になったけれど、それでも──。
信じていたい。サンタクロースを。
もう数ヶ月も前から新一の身柄は予約済み。だけど、この期に及んでもまだ信用なんてしてないんだからね?いっつも事件と聞くと飛び出していく、デートをすっぽかされたのなんて両手一杯でも足りないくらいよ。
待ち合わせの時間が午後四時。時間通りに待ち合わせの駅前の広場に着いたのに、携帯のメール着信のメロディにため息…。また?
──ちょっと遅れる。そのままそこで待ってて。──
酷なメッセージが届く。
素早く返信。
──また事件?遅れるって何時ごろになるの?──
こちらのわずかな怒りが届くだろうか?
再び着信。
──十五分くらい──
ま、ね。十五分くらい、待ってあげようじゃないの!!だけど十五分過ぎたら帰っちゃうからね?
広場のベンチに座って、持ってきていた文庫本を開く。
…新一とのデートにコレは必需品。こうやって待たされるのなんて慣れてるんだから。
十分経過。
「寒い…」
すこぅし震えた。新一はまだ来ない。
文庫本を閉じてふと空を見上げた。
「…寒いけど、青空なんだ」
わたしは少し嬉しくなって流れる雲を見た。
「綺麗…」
ぽつりと呟いた途端、空からちらちらと白いものが降りてきた。
あ…
「雪だ」
今落ちはじめた雪。まだここまで届かない雪。でも雪が見える。
地上に落ちる前に雪を見つけるなんてこと、出来るものなんだ。
思わず立ち上がると、通りの向こうから走ってくる新一が見えた。白い息が乱れた髪がどんなに急いで駆けつけたのかを物語っていた。
わたしの姿に気づくと、「よっ」と手を上げた。
わたしは名前を呼ぶより先に「雪だよ」と微笑んで空を見上げた。
「えっ…?」
新一も釣られて空を見る。
「今、降って来た?」
「うん。今、だよ、今」
「へぇ…、雪か」
「うん」
何とはなしにシアワセな気分。
「なぁ、覚えてっか?」
「うん?」
「未来は空から降ってくるって言っただろ?」
「…覚えてるよ。ホント気障よね」
「んじゃ、今まさに未来が降って来たってことだよな?」
「え?」
「ホラよっ」
新一は小箱を空へ投げ上げた。
わたしは雪と一緒に降って来たその「未来」を両手で受け止めた。
「メリークリスマス!!」
見事にウインクを決め、新一は満足そうに微笑んだ。
空から未来が降ってくる。
信じていたサンタクロースは今、目の前にいる。
おしまい
なんかこのタイトルって憂鬱そうだね。せめてブルースカイクリスマスってのにすればよかったと今頃後悔。ちなみにこれは誕生日のお返しにぱうち〜に捧げたお話でした。2002年12月に書いたもの。