浴 室
風が頬に心地いい季節。秋。
受験生の二人は、時々お互いの家に行き来しながら、共に勉強していた。
「新一?今日、ウチ来る?」
学校帰りに無邪気に微笑む蘭。
「う、…うん。今日おっちゃんは?」
「さぁ、ここんとこ忙しいみたいよ。今日も遅いのかなぁ」
「遅くに帰ってくるってこと?」
「うん。……何?」
「あ、いや」
新一の言葉にならない気持ち…。
(ホントは「今日は蘭を抱きたいんだ」って、「だから、ウチに来ない?」って……言えるわけねーよな・・・・・・)
二人は、いわゆる恋人同士で、はじめて一線を越えたのは、夏のはじめ。そして、会うたび求める新一に蘭はちょうど1週間前、喝を入れた。
「受験生…なんだから、……こんなんじゃダメじゃないのかなぁ?」
「蘭は………その………嫌なのか?」
「…そんなこと言ってないじゃない。ただ、受験終わるまでは、……ね?」
(冗談じゃねーよ。何ヶ月もお預けだって言うのか?)
知ってしまった甘い蜜。知らないほうがまだましだった。
この1週間。よこしまな考えを何度も打ち消しながら過ごして来た。それでも、夜な夜な蘭を思い出し、一人慰める日々……。
(せめて、おっちゃんが帰らない夜ならよかったのに)
「蘭……」
おもむろに肩を抱き寄せる。
そこそこ人通りのある通りでのこと。蘭は目を丸くした。
「な、何?」
(オレの気持ち…わかんねーかなぁ…?)
強引に路地に引っ張りこんで、くちびるを奪う。
蘭は、抗おうと試みたが、すぐに静かになる。
(そっか、蘭はキスに弱い。こんなにオレに身を任せてしまってる…)
長いキスのあと。
「急に…どうしたの?新一…」
顔を真赤に染めて見つめる蘭。こんなに日が高いのに艶めいた目になっている。驚いてドキリとする。心臓が高鳴るのを知られたくなくて、
「感じた?」
と冗談めいた一言。
「バカ!!」
案の定、蘭はそっぽを向いた。
実は、蘭の方も心臓の音がただならぬ速さでドキドキいってるのを隠そうとしていた。
(キスだけで感じたよ……わたしって、どうなってるんだろう……)
*****
新一は一旦家に帰ってから、出直した。
ラフな格好に着替えて、参考書なんかを持って家を出る。
そして、もう一つ。大事なものもポケットにしまってある。
(備えあれば憂いなし……なんてな)
蘭は、簡単に家の掃除をして新一を待つ。
小五郎は、出かけている。仕事で出ているらしいが帰宅する時間まではわからなかった。
ついでに晩ご飯の支度もはじめる。
(新一も食べて行くかな……)
そう思うと、少し料理にも力が入る。
しばらくして、インターホンの音。
ピンポーン♪
「はーい」
玄関に駈けていく。新一だろうと思うから、その足取りも軽い。
ドアを開けると、そこに新一が立っている。
「よっ!」
「いらっしゃい」
「これ、買ってきた」
近くの美味しいケーキ屋のケーキを片手に持っている。
「ありがとう」
にっこり微笑む蘭はエプロン姿で、髪は珍しく後ろに束ねポニーテールだった。
中のキッチンからなにやらいい匂いが漂う。鍋がことことと音を立てている。
さながら、蘭は新妻のようで。家はまるで新婚家庭のようで。
そんな光景に新一は、しばらく釘付けになっていた。
「どうしたの?」
動かない新一の目の前で蘭は手を振る。
「えっ?…いや、なんでもない」
やっと正気を取り戻して、そんな自分に照れる。
「先に勉強してて。あたし晩ご飯の支度、途中だからやっちゃうね」
「う、うん…」
蘭が指差すのはリビングのテーブルで。ここで向かい合って勉強しようってわけだと知る。
(蘭の部屋にも入れてもらえねーわけか)
落胆の色は隠せない。
が、黙ってその場に座った。キッチンに立つ蘭の後姿がいいな、と思いつつ。
ともかく、テーブルに教科書参考書ノート等々を取り出して、勉強してるフリ。
しばらくして、ようやく蘭の手が止まった。
「今、何やってるの?」
「えー……英語」
「あら、新一英語得意じゃない。あ、そうそう教えてほしいとこあったんだ…えとね…」
部屋からノートを持って蘭は新一の隣に座る。
「ここなんだけどね。この…………」
新一はボーっと蘭を見ていた。ふと思い出す、学校帰りのキス。艶めいた目。あの時と同じ蘭の微かな香りにドキッ。
「……なんだけど、これはこれでいいの?」
質問に耳がついていかない。
「え?何?」
「どうしたの?」
「いや……」
「変なのっ」
「もっかい言ってみ」
「うん…。だからね………」
くちびる、指先、Tシャツから透けて見える蘭の下着。新一の気持ちの高ぶりは抑えきれず。いきなり蘭のくちびるを塞ぐ。
「あ……新一!!」
じたばたと新一を制す蘭。
(蘭はキスに弱いんだ……)
新一は蘭を離さずキスを続ける。そして、そうするとやはり蘭の力が抜けていく。
キスは深く、長く。舌を絡め合いながら二人で夢中になって。
新一の手が蘭の胸に伸びる。Tシャツの下からそっと手を侵入させブラのホックをすでに探り始めている。
「ぁあ…ん、やだ、新一ぃ…」
抗うのは言葉だけ。そこからは熱い二人の時間がはじまる。…はじまるはずだった。
その時。
ガシャン。
突然開く玄関の扉。そこに立つのは小五郎だった。
二人ははっとして体を離した。…セーフ?
「よぉ。新一じゃねーか。……勉強か?」
「は、はい!」
「蘭、今日これからちょっと出かけてくるわ。晩飯いらねーから」
「し、仕事?」
「けっ。仕事は明日に持ち越し。疲れちまった…」
「え?じゃ、飲みに?」
「遅くなるから、戸締りだけはちゃんとしてろよ?」
「また麻雀ね?」
「財布は、っと…」
小五郎はサイドボード上の財布を手にすると、さっさと手を振って行ってしまった。
(…にしてもヤバかったよな。あと5分遅かったら……。おっちゃんに殺されてたぜ!)
話の腰を折る、なんて言葉があるけど、こういうのはなんて言うのだろう。新一も蘭も、先ほどまでの熱いものが一瞬のうちに冷めてしまっていた。
却って二人とも恥ずかしさが募る。小五郎が出かけたばかりでは、「ひょっとしてまた帰ってくるかも」と思わずにはいられない。
「…お腹空かない?」
「え?…ああ、少し」
「もうご飯炊けるから。食べてくでしょ?」
蘭は立ち上がって炊飯器を確かめる。
時間は……、と新一が自分の腕時計を見る。6時。
(なんだか勉強なんて全然はかどらないぜ…)
苦笑しながらも、蘭がまたエプロンを付けて鍋をかき混ぜる辺りの仕草を楽しむ新一だった。
******
二人きりの夕食は、やっぱり新婚気分で。向かい合うのが照れくさい。
コナンだった頃を除けば、ここに二人きりで食事というのは、はじめてかもしれない。いつも、小五郎が共に食卓についていたから。
(おっちゃん、麻雀だとすると、今日は帰らねーな……)
また新一のよこしま心は大きくなっていくのだ。
夕食。食後に少しだけテレビを見て、そして少しだけ勉強。夜も更けていった。時間はすでに10時過ぎ。
「そろそろ……」
(帰ったほうがいいよな?)
「あ、よかったらお風呂入ってく?」
「えっ!?」
ことのほか驚くと、蘭はハッとした。
「ち、違う違う。ただ、帰ってからだと面倒だと思って……」
真赤になって弁明する。それが可愛かったので、新一はちょっとばかりからかってみる。
「…じゃ、面倒だから泊っていこうかなぁ」
真に受けたらしい蘭は、更にカーっと顔を熱くした。その仕草に見とれる新一。
「あーっ、もうダメだ!!」
新一は、吐き出すようにそう叫ぶと蘭を抱きしめていた。強く抱きしめられて蘭は身動き一つできない。
「もう…限界なんだよっ」
「し……新一…?」
腕の中で新一を見上げる蘭。抱きしめる手の強さで、新一の求めているものがよくわかった。
「蘭を抱きたい。今抱きたい。すぐ抱きたい…」
言葉にして告げる。それを聞くと、蘭は小さく微笑んだ。
「新一…」
名前を呼んで、その両頬を手でやさしく包む。そして、蘭の方からそっとそのくちびるにくちづけた。
「いいの……か?」
蘭はゆっくりと頷く。
新一は待ちきれずに蘭の胸に顔を埋める。
「ちょ、ちょっと待って……。ね、シャワー浴びてから……」
「いいよ、そんなの」
「嫌だよ…」
「じゃ、先、入って来る?」
「え……?」
「それとも一緒に…」
「バカ!」
そう言って蘭はバスルームに消えていった。
新一は落ちつかないまま、戸締りを確認していた。玄関、窓、鍵は閉まっている。
待ってる時間は長く感じて、バスルームの蘭が気にかかる。
(…にしても、風呂くらい一緒に入ったっていいんじゃねーか?)
かと言って覗きをするなんて工藤新一のプライドが許さなかった。
(ヤバッ。想像してるだけで……)
新一の下半身は勢いづいてきた。
そこへ。
ガチャガチャと玄関のノブを回す音がした。
(えええ!!まさかおっちゃん!?)
新一は、この状況は非常にまずいと判断し、自分の靴や持ち物をまとめて持って、蘭のいるバスルームへ侵入した。
聞き耳を立てていると、ガチャリ、鍵が開く音がして、ドアが開いた。
酔っ払い気味の小五郎の足音が聞こえてくる。
「蘭!!帰ったぞーっ!」
大きなその小五郎の声で、蘭はようやくこの状況に気づいた。
(お父さん!?…どうしよう?新一は…?)
新一は浴室のドアをコンコンと軽くノックして「ここにいる」と告げた。
「…んだぁ?風呂か……」
リビングから小五郎の声が聞こえ、しばらくしてそれがいびきに変わった。
(リビングで寝ちまったぜ…。はぁ………どうしたもんかなぁ)
浴室では、蘭も動きを止めている。
(ここからそっと外に出る方法は…。浴室の小窓くらいかなぁ。脱衣所には窓はないから)
キョロキョロと周りを見回すと、ふと目に入ってきた蘭の下着とパジャマ。新一はゴクリと唾を呑みこんだ。
「どうする?」
埒があかないので蘭に問いかける。
「ともかく電気消して…。そこに新一がいたんじゃ、わたし…出られない」
「気にすんなよ。んな細かいこと」
そう言うと抗議の言葉の代わりにドアに向かって激しく水をかける音がした。
「ちぇっ…。じゃ電気消すから出てこいよ」
浴室、脱衣所、両方の電気を消す。辺りは真っ暗闇となる。
湯船から上がる水音が聞こえて、蘭がこちらに出てこようとする気配がわかる。
その時。
ガシャン。ドン!ガタガタッ。
激しい物音が響いた。
驚いた新一は、咄嗟に電気を点けて浴室のドアを開けていた。
「大丈夫か?」
心配して入っていったのに、
「キャッ、来ないで!」
と、蘭は必死で自分の体を隠す。蘭は少しばかり転んだらしく洗い場に膝まづいていた。
「シッ。風呂場は声が響くんだよ。外にまる聞こえだって」
蘭が恥ずかしがっていることなどお構いなしで新一はずかずかと浴室に入って、蘭の体を支えた。
「嫌っ…見ないで。…それに新一濡れるわよ」
蘭の髪はアップでまとめられていて、そのうなじが色っぽい。後れ毛がそそる。
「シッ。静かに……」
蘭を黙らせる手段。……そう、またそのくちびるを塞ぐ。
蘭に脱がすべきものは何もなく、自然、新一の両手は本能のままに動き始める。
その胸を揉みしだく。もう一方では下半身を捉えはじめる。
「ん……」
喘ぐことを許されない蘭は、辛そうな表情で目を閉じている。
新一は着ているものを自分で脱ぎながら、蘭を攻め続ける。その指で、くちびるで、舌で。
蘭の敏感になった乳首がそそり立つ。そこにくちびるを寄せながら、最後の一枚を脱ぎ終わる。
素早く脱ぎ捨てた服を脱衣所に放り投げ、浴室の扉を閉める。
そして、一気にシャワーで二人の体を濡らす。
頭からシャワーを浴びて、裸の肌を重ねるように抱きしめる。
「あ…」
すでに新一の息づいたモノが蘭の肌に触れ、蘭を驚かせる。
「だから限界だって言っただろ?」
蘭の甘い蜜を蓄えた蕾に新一が指を入れる。もう待ちきれないんだと言わんばかりに。
シャワーを止めて、今度は背後から強く蘭を抱きしめ、その胸を探る。うなじにキスして、耳元で名前を呼ぶ。
「蘭……」
もう一度、先ほど潤いを確かめた蕾の部分に指を差し入れ、いたぶるように揺り動かす。
蘭は声を殺しながらも快楽に身を任せる。
「ぁ……」
少しでも声を出すと、背後から新一の手が蘭の口を塞ぐ。
「我慢して…」
悶える蘭に、我慢が限界なのは、新一も同じ。
そして蘭を浴室の壁に押しつけ、ようやく新一は蘭の中に呑み込まれていく。
蘭は荒い息だけを洩らしながら、新一を受け入れる。
何度となく貫くうちに、立っていることすら辛くなる蘭。膝が折れそうになる。そのしなだれた体を、今度は前から抱きしめて、続きをはじめる。洩れそうな声は、新一がそのくちびるを塞ぐ。
新一の耳元で、
「……もう…ダメ…」
と蘭が囁く。
その声に急かされて、新一は、更に激しく蘭を貫く。
「イクよ?」
頬にそっとくちづけてから、新一はのぼりつめ、果てた。
「もう…新一ったら……こんなとこで」
「だってオレ、限界だって言っただろ?」
「それにお父さんがそこにいるんだよ?」
「それは……でも酔っ払って寝てるし……」
「寝てるって言ったって!」
「シッ。大きな声は出さないの。……でも、よかっただろ?」
「……バカ」
「よかったくせに……」
「もう……」
二人仲良く並んで湯船につかって話している。
蘭はなんだか妙で騙されたような気分だった。
「オレはよかったぜ」
ニッと笑って新一が蘭にキスする。
更に、お湯の中の蘭の胸にも手を出して、わざわざ潜ってキスをする。
「もう、バカなんだから」
くすくすと蘭は笑いながら、その頭を風呂水の中に突っ込む。
心が和む。二人でいるとしあわせ。
ずっとずっと一緒にいたいから、不安も大きくなることを蘭は少し知っている。
新一は、いっそ今「結婚しよう」と言ってしまいたいくらいに蘭を愛しく思っていた。
だけど……
(プロポーズが風呂場じゃなぁ…後々恨まれそうだもんな)
思いなおした新一が、プロポーズするのは、そんな遠い日ではない───。
が、……それはまた別の話。
fin
entrance
朝。起き抜けに、新一は昨夜の一部始終を頭で忠実にリプレイさせていた。
浴室での情事。それは、いつになくスリルがあり、いつになく高ぶった。
思い出すだけで、またも息づく自分のモノに呆れながら、ベッドから起き
上がれないでいる。
(…痛てぇ…)
起きられないのはそのせいだけではなかった。頭痛である。
(昨日、髪、濡れたままだったから、風邪引いちまったかな)
昨夜は浴室の小窓からそっと逃げるように蘭の家を抜け出した。蘭は、
ちょっと心配そうに手を振っていた。その顔はさびしげで。
(ずっと一緒にいられたら、どんなにいいか…)
見送る蘭を見ながら、そう思わずにはいられなかった。
その時、インターホンが鳴り響いた。
時計を見ると、ちょうど登校の時間。その来客は十中八九、蘭だと断定
できた。
ちょっとふらつくが、ようやく玄関ホールまでたどりつき、そのドアを
開ける。と、やはりそこには制服姿の蘭が立っていた。
「新一?」
「よぉ!」
ドアの隙間から覗きこむようにして、蘭は新一を見ている。昨夜のことが
あったから、お互い少し気恥ずかしい。更に蘭の視線は新一のパジャマの上着
へ。大きくはだけて裸の胸が見えているから赤面してしまう。
そんな蘭を見ると、やはり新一も自然昨夜の蘭を思い出す。妖艶な蘭の肢体
をその制服の上から見てしまう。
「…なにしてんのよ。時間ないよ?」
慌てて視線をそらして蘭はいつもの強い口調に戻る。
「オレ、ちょい頭痛くてな…」
「え?風邪かな?熱は?」
蘭は、新一を外に引っ張り出して額に手を当てた。
「ん?」
首をかしげて、今度は自分の額をそこにくっつけた。されるがままの新一。
「微熱…かな」
そんな蘭の甲斐甲斐しさに、ちょっとうれしくなって新一は微笑んだ。
「サンキュ」
その頭をそっと撫でる。
すると、通りがかったどこかの主婦が「あらまぁ」と言ったふうに通り
すぎるのが見えた。また二人して気恥ずかしさが舞い戻った。
「あ…、あのね、昨日の忘れ物…」
蘭が手渡したのは参考書で。
「こんなの学校でよかったのに……」
と言ってから、参考書といっしょに手渡された物を見てハッとした。
(うわ、これは例の………。どこに落として来たんだ?)
「脱衣所に…落ちてたの…。わたしが見つけたからよかったものの…ったく」
(そっかぁ、服を投げ込んだあの時・・・)
「これ届けにわざわざ?」
「だって…」
昨夜の蘭はあんなに艶めいて乱れていたのに、今ここにいる蘭は、まるで
少女のように清楚だった。両方の顔を知っている自分が、ちょっと誇らしく。
「蘭…」
オレはまたも蘭を誘い込もうとしている。
その腕を取って玄関の中へ引っ張り込んだ。すかさずくちびるを奪って
抱き寄せる。と、少し遅れて玄関のドアがバタンと閉まった。
「んっ……」
蘭は、ここまでと言わんばかりに新一の手を制御した。制御されてなかった
ら、恐らくその手は蘭の胸を探っていたはず。
「熱あるんだから、寝てなきゃダメでしょ!!」
強い口調で蘭は抗議する。
「看病してくれる?」
「わたし、でも、学校が…」
「1日くらい、いいだろ?」
そう言って、蘭を玄関のドアに押しつけて、何故かまたくちびるを奪って
いる新一だった。
が、今度は蘭の制御する手が見当たらない。当然、新一はそのまま蘭の制服
のボタンに手をかけていた。
「ダメだよ…新一…」
わずかに抗って見せるものの、蘭に力は入らない。
はずされたボタン。中から現れたブラジャーはフロントホックで、すぐさま
それを取り外した。白い胸に光が射し込んで眩しい。溢れる乳房を口に頬張っ
て、すでに尖った先端を舌で味わった。瞬間、蘭の声が怪しく漏れる。
声を聞いてしまうと、新一は更に止まらなくなる。
スカートの中に手を差し入れる。下着を乱暴に引き下ろして、その潤いを
確かめた。
「いやぁ………」
蘭の頬が紅潮する。玄関ホールに蘭の声が響く。
何気に壁に掛かった鏡に、蘭の乱れた姿が映るの見て、新一はますます勢い
づいて。蘭の潤った場所に指を入れて、わざとらしく音を立ててみせた。舌先
は相変わらず胸を捉えて離さない。
新一は、蘭の下半身の動きに少し驚いた。微かにその腰を揺らしているのは
気のせいではない。蘭が動いている。蘭が快楽に夢中になっているのを知った。
新一が蘭を知って、蘭が新一を知って、まだほんのわずか。
新一は、まだ蘭を絶頂に到達させる術を知らないでいた。お互いにお互いの
存在が未知だった。
この時はじめて、自分を、ではなくて、蘭を満足させることを新一は考え
はじめた。そうやって蘭を支配したかったのかもしれない。
指で、舌で、あるいは耳もとの囁きで、新一はひたすら蘭を攻めつづけた。
すると。
蘭の濡れた部分は小刻みに震え、蘭は新一の背中に爪を立てながら絶叫した。
そんな蘭の姿に満足しながら、ようやく新一は自分のモノを蘭の中へ沈めて
いく。はだけた制服もそのままに。却ってその姿が新一をより高めていた。
蘭はドアに体を押しつけられながら、新一を受け入れた。突き上げられなが
ら、そのドアがギィギィと音を立てるのが気になった。それでも快感の中で
声を殺すことも出来ずに喘いでいる。
ふと新一の動きが止まり、体を反された。そのまま玄関の重厚なマットの
上に四つ這いにされ、後ろから獣のように貫かれた。
貫かれる毎に揺れる豊かな胸を、新一は掴んで揉みしだき、更に激しく攻め
続ける。蘭の喘ぎ声は絶え間なく玄関ホールに響き渡った。
限界に達した新一は、蘭を後ろから強く抱きしめ、そして果てた。
「…また、こんなとこで………」
「仕方ないだろ?」
「でも、こんなとこでなんて……もう」
玄関マットの上に並んで座っている。蘭はまだ胸もはだけたまま。
「けど、蘭がこんなもの手渡すから」
使用済みとなった例のモノを取り出す。
「だって、これは!だいたい新一がうちに忘れて……」
言いかけてやめる。
「なに?」
「…もう、いい」
そう言うと、蘭は恥かしそうに、けれどとても情熱的に新一を抱きしめた。
思わずその胸にまた顔を埋めようとする新一に、
「新一のスケベ!変態!!」
と言って笑う。
「変態ってなんだよっ。しっかり感じてたくせに!」
鼻であしらう新一。
「やだ、もう……。変態だから変態って言ったのよっ。昨日だって…」
「なんだよ、オレは至って健全だぜ?」
「健全!?」
呆れてものも言えないと言ったふうに蘭は目を丸くした。
「好きな女を抱きたいってのは至って健全ってことだぜ?」
ニッと笑ってその頭を小突いた。
すると、蘭の瞳が潤むのがわかり、たちまち涙はこぼれおちた。
「お、おい、泣くことねーだろ?」
「だって……」
「しょーがねーなぁ…」
新一は蘭を優しく抱きとめた。抱きとめながら、昨日の考えの続きをまた
考え始めている。
(プロポーズ……やっぱここでもダメだよな)
あらためて、どこでプロポーズするべきか、新一は懸命に考えている。
そのプロポーズの日は、もう、すぐそこまで来ている。
でも。………それはまた別の話。
fin
*たぶん、それはキッチンで……(笑)
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