BREATHLESS LOVE  高瀬美弥

 

狂おしいほどの口づけを新一から浴びせられながら、蘭は一抹の不安を隠せないでいる。

いつもの新一らしくない・・・。

逢えなかった時間が新一に変化をもたらしたのだろうか?

今、自分に触れているのはまぎれもなく新一だという確信とともに、また新一と離ればなれになってしまうのでは・・・

という不安が胸から離れない。

「新一・・・シャワーあびたいの・・・」

のし掛かってくる新一をそっとかわしながら、蘭は小声でつぶやいた。

「そのままでいいから・・・」

新一の両目にも、その口調にも思い詰めたような表情がうかがえる。

ブラウスのボタンをはずそうとする新一の手を、蘭はそっと押さえた。

「また、私の前からいなくなっちゃうのね?新一・・・」

新一はうつむいて何も答えない。

蘭は目をつぶって小さな小さなため息をもらした。

「待って・・・」

「蘭、イヤなのか?」

「そうじゃないの。私、新一が好きよ。新一も私のこと好きでいてくれるんでしょう?」

「・・・あたりまえだろ。んなこと聞くなよ」

「ありがとう、ならいいの。新一に抱かれるんじゃなくて、私が新一を抱いてあげる・・・」

蘭はそう言うと、新一のシャツに指をかけた。

唇に、頬に、首筋に、キスの雨を降らせながら、シャツのボタンをひとつひとつはずしていく。新一はただ黙って、

蘭のなすがままになっている。

そうして新一が身ひとつになると、蘭は立ち上がり自分で服を脱ぎ始めた。

パステルイエローでコーディネートされた蘭の下着姿を、新一はまぶしそうに見つめる。

蘭はそのままの格好で、新一の全身にキスをしていった。

優しく、優しく、慈しむように・・・。

「あ・・・蘭・・・」

新一が切なげに声をもらす。でも蘭はやめようとしない。ますます執拗に唇での愛撫を続けた。

「ら・・・らんっ・・・!」

思わず身を起こそうとした新一の胸をそっと押さえて、蘭はにっこりと微笑むと自ら下着を脱ぎ捨てて、新一の

上に重なっていった。

 

 

新一は、眠っている蘭にそっとキスをした。

もう時間がない、戻らなければ・・・。

さっきから胸のあたりに、身に覚えのある感覚が蘇ってきている。

早くしないと・・・。

蘭を起こさないようにベッドから抜け出すと、ふらつく体で手早く服を着る。

名残惜しげに蘭を振り返りながらドアへ向かい、ノブに手をかけた時だった。

「新一・・・私待ってるから・・・」

眠っているとばかり思っていた蘭は、ベッドの上で身を起こして、まっすぐに新一をみつめている。

「蘭・・・」

「もう、行って・・・お願い。私、あなたの隠していることに気づかないままでいたいの・・・そうじゃないと、私・・・」

「蘭・・・オレ・・・」

「いいから、早く。私なら大丈夫だから・・・私には小さいけどとっても頼りになるナイトがいつでもそばについてて

くれるんだもの」

「必ず、お前のところに戻ってくるから」

「バカね。そんなことわかってるよ。私はいつだって新一を信じてるから」

涙まじりの蘭の声が新一の胸を抉った。

「じゃあな・・・」

それだけ言うのが精一杯で、新一は部屋を出た。ドアに寄りかかる。体に変化が現れ始めていた。ドア越しに

聞こえてくる蘭の嗚咽を振り切るように新一は一歩踏み出した。

再び新一として、蘭を抱きしめられるその日に向かって・・・。

 


◇みなさんとは違った角度から書いてみました。女の子の方から愛するひととひとつになる、そんなお話を書いたつもりなのだけれど・・・
細かい設定はなにひとつしていません。すべてご想像におまかせします、ということで。ここがホテルの一室なのか、蘭の部屋なのか・・・とかね。どういう状況で、こんなふうになったのか・・とか。読めばわかるけど、新一に戻ってからのお話じゃなくて、一時的復活した新一のお話です。それも、白乾児飲んだのか、哀ちゃんや博士が何らかのクスリをつくってくれたのか・・・不明なの。永遠と信じている愛の中の一瞬の切なさ、みたいのをかきたかったのでこんなんなっちゃいました。【高瀬美弥さん談】